鶴岡の在来作物

 友江フキ、早田ウリ、民田茄子、藤島キモト。昔の女性の名前と思いきや、すべて山形県鶴岡市の在来作物(伝統野菜)の名前です。他にもユニークな名前のものがたくさんあり、多くが産地の地名を冠しています。その意味でも歴とした地域資源と言えます。
 在来作物は、その土地独特の気候や土壌、焼き畑のような伝統的な農法等に立脚して、何世代もその土地で継承されてきたもので、他にはないユニークで素晴らしい品質を持っています。鶴岡食文化創造都市推進協議会によると、山形県内に残る在来作物は150を超え、そのうち鶴岡市には50を超える在来作物が残っているようです。県内各地の生産者に光をあてた映画「よみがえりのレシピ」でも、鶴岡の在来作物が取り上げられています。
 鶴岡では2010年、地域の食文化を地域振興に生かすため、ユネスコの「創造都市ネットワーク」の食文化分野での加盟を目指し、2014年12月に正式に加盟認定されました。これによって、自分たちの食文化に誇りをもち、それを世界に発信することで誘客につなげていきたいようです。
 筆者は以前、焼畑によって在来作物の栽培をしている鶴岡市内の産地へ視察に行ったことがあります。農家の老夫婦の案内で、まちから離れ、山間地の急傾斜な畑へ行きましたが、お年寄りには過酷とも言える場所であったことを記憶しています。また、後継者不足という現実も感じましたが、それ以上に在来作物を次世代へ伝えていこうという強い意志も感じました。
 視察に同行していただいた山形大学・江頭先生の「在来作物が消えれば、地域の歴史や文化も消える」という危惧は、スローフードにも通じます。効率が悪くても、規格外でも、見栄えが悪くても、各地で先祖代々受け継がれてきたアイデンティティでもある固有の食材や食文化を誇りを持って守っていくことが、持続可能な地域やコミュニティを作ることにも通じ、他の地域から人を呼び込むこむことにも通じると確信します。(Y)
(写真左から焼畑、藤沢カブ、在来作物を使った料理)。

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