B-1グランプリをきっかけに、日本各地のご当地グルメが注目されるようになって久しいですが、今回は食べに行くのも一苦労のご当地グルメをご紹介したいと思います。
そのご当地グルメは、神奈川県の丹沢山地の南部に位置する鍋割山の山頂で食べることができます。鍋割山山頂は、車でアクセスする事ができず、たどり着くには山道を歩くしかありません。最短の登山ルートをたどっても、3時間以上の山歩きが必要です。しっかりとした登山装備が必要で、町歩きの服装では大変危険です。
へとへとになってたどり着いた山頂で食べることができるのは鍋割山荘の名物グルメ、具沢山の「鍋焼きうどん」(一杯1,000円)です。野菜やキノコ、てんぷら、卵など、たくさんの具材がどっさり入った贅沢な逸品です。汗をかき疲れた体に染み渡ります。
この鍋焼きうどんは、鍋割山荘の主人である草野氏が、鍋割山をもっと知ってもらいたいという想いで始めたものです。今では、鍋焼きうどんを目当てに、大勢の登山客がやってくるようになりました。春や秋の週末は大変な賑わいで、鍋焼きうどん目当ての行列ができ、注文してから提供されるまで30分以上かかることも良くあります。大賑わいの山頂では、多くの方が鍋焼きうどんを食べながら、絶景を楽しんでいます。
下界と異なり、物資の輸送が困難な山小屋でこのような食事を提供する事は、非常に大変なことです。北アルプスなどの大規模な山小屋では、ヘリコプターによる物資の輸送が一般的になっていますが、丹沢の山小屋は、いわゆる「歩荷」と呼ばれる手段に頼っており、全て人の手によって物資が担ぎ上げられているのです(時には100kgにも及ぶ荷物を背負って登ることもある)。山小屋関係者の並々ならぬ努力を知ると、より一層この食事の価値が増すように感じます。
食べに行くのも一苦労のご当地グルメは、まだまだたくさんありますので、今後もご紹介していきたいと思います。(N)