先日、沖縄県那覇市を訪れる機会がありましたが、外国人観光客の多さに驚きました。中心街の国際通りには多くの観光バスがとまり、どのお店も外国人観光客で賑わっていました。なんと店の呼び込みも日本語ではなく外国語です。
統計上の数字からも外国人観光客が増加していることが伺えます。平成29年度沖縄県入域観光客統計概況によると、沖縄を訪れる外国人の数は毎年増加を続けており、平成29年度の入域観光客数は957万9,900人で、前年度比で81万 700人、率にして9.2%の大幅増となっています。
外国人観光客増加の背景には、東南アジア方面の海外航空路線の拡充に加え、台湾・中国からのクルーズ船の寄港回数の増加が大きく関係しているようです。国土交通省によると、2017 年の訪日クルーズ旅客数は前年比27.2%増の253.3 万人、クルーズ船の寄港回数は前年比 37.1%増の 2,765 回となり、いずれも過去最高を記録しています。また、外国船社が運航するクルーズ船の日本の港湾への寄港回数は、過去最高の2,014 回となっており、港湾別では、第1位:博多港 309 回、第2位:長崎港 262 回、第3位:那覇港 217 回となっています。
クルーズ船は、寄港地を中心に一度に多くの観光客が訪れ、グルメ、ショッピングなど地域での消費が生まれます。大きな経済効果が見込めることから、国もクルーズ振興に力を入れつつあります。国土交通省は「訪日クルーズ旅客を2020年に500万人」という高い目標を掲げて、外航クルーズ船の寄港増や大型化に対応するソフト・ハード面での環境整備、「クルーズ振興地方協議会」、「クルーズアドバイザー認定制度」、「クルーズ・オブ・ザ・イヤー」などへの支援を行なっています。
一方、日本のクルーズ船の受入環境には、課題が山積しています。例えば、東アジアからのクルーズ船に人気が高い九州・沖縄の港には、クルーズ旅客の乗降に適した埠頭の数が限られており、潜在的な寄港需要を取りこぼしています。旅客ターミナルも不足しており、効率的に観光客を輸送することができていません。 那覇市では、観光客増加に交通網が対応できておらず、慢性的に激しい渋滞が発生しています。
このようにクルーズ船の誘致には、まだまだたくさんの課題がありますが、経済波及効果は一寄港あたり数億円とも試算されており、地方創生の大きな原動力になることは間違いありません。筆者は二年前、クルーズ船に乗って日本各地を回りましたが、寄港地ごとに様々な催しがあり、またお土産を大量に購入したり、現地でグルメを楽しんだりする方が多いことから、かなりの経済効果があることを肌で感じました。地方創生の手段の一つとして、今後もクルーズ船の研究を続けていきたいと思います。(N)