まき鯛車(たいぐるま)商店街は、「繁盛店無くして商店街の活性化は無い」という理念のもと、商店街にかつての賑わいを取り戻すための挑戦をつづけています。この商店街は、新潟駅から在来線に乗ること約40分、JR越後線巻駅の西側に広がっています。
まき鯛車商店街は、巻地区の11の商店街が集まって平成22年5月に発足しました。 商店街名に使用されている「鯛車(たいぐるま)」とは、商店街が位置する巻地区に昔から伝わる鯛の形をした郷土玩具です。まき鯛車商店街の構想を練っていた頃、巻商店街にある商店の土蔵から昭和初期に作られた「鯛車」が発見されました。非常に繊細で丁寧に作られていたと言います。この発見をきっかけに、巻地区という地域を連想させるシンボルとして「鯛車」を使用する事になったと言います。
このまき鯛車商店街の結成を取りまとめたのは、低迷が続く商店街に危機意識を持っていた若手店主たちでした。
「最近では商店街がなくても生活できる環境になってきています。だからこそ、商店街の商店が生き残るには、一店一店がお客様に必要とされる店にならなければならいのです。」若手店主の一人である“はしもと玩具店”の橋本孝之さんは、商店街を構成する各店それぞれの努力と工夫が最も重要だと言います。「商店街振興でよく採用される方策は、イベント等でとにかく人を集めることです。しかし、一時的に人出を増やしても、魅力のない店には結局入ってくれません。まずは各店舗の魅力を高めることが先決なのです。」
まき鯛車商店街では、「活性化された商店街」を「繁盛店が軒を連ねている状態」と定義し、取組を行っています。
その取組の一つが、商店街の店主が集まって開催している勉強会です。勉強会では、それぞれの店舗が抱える課題を持ち寄り、お互いにアイデアを出し合っています。商店街では、他の店のことには口出ししてはいけない雰囲気がありましたが、全国商店街支援センターのグループコンサルを受けたことがきっかけになり、このような取組を行うことが出来るようになったと言います。「根本的・長期的に問題を解決するための基礎作りをやっています。時間はかかりますが、少しずつ良くなっていけばと考えています。」橋本孝之さんの店舗をはじめ、勉強会に参加しているメンバーの店舗では、少しずつ売上や来客数が改善するなど、成果が出始めています。
また、「カリーナ」と呼ばれるご当地グルメを復活させる取組も行っています。「カリーナ」とは、焼きそばにカレーミートソースをかけ、紅生姜を添えた料理です。かつて新潟市内で50店舗を展開していた「ラーメンタカノ」の人気メニューで、「ラーメンタカノ」が閉店した現在でも根強いファンが存在します。
かつての「カリーナ」を完全に再現するのではなく、「帰ってきたカリーナ」と銘打ち、提供する店舗の個性を出せるスタイルで展開しています。狙いはあくまで繁盛店を作ることであり、店を知ってもらうためのきっかけとなればと考えられています。
これらの取組は、あえて商店街内で足並みを揃えないでやっており、やる気のあるメンバーが先導して、周りがついてくる状況を作ろうとしています。
「商店街の店主が商店街活動に参加できなくなることが最終目標です。」各店が忙しくなり、商店街活動ができなくなるような状態を目指していると橋本孝之さんは言います。熱い思いを持った若い店主たちが活躍するまき鯛車商店街の挑戦は、これからが本番です。(N)