日本のアニメ・漫画は、世界中から注目されています。総務省の調査によると、2012年度はアニメが最も多く輸出されている放送コンテンツであり、放送コンテンツ輸出額の6割弱を占めるそうです(出所:総務省情報通信政策研究所「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析」)。まさに世界に誇る日本の文化の一つと言っても良いでしょう。
そんなアニメや漫画で、町おこしの活路を見出そうという動きが広がっています。特に、美少女キャラクター(萌えキャラ)を前面に押し出した町おこしが活発で、「萌えおこし」と呼ばれています。
今回は、そのような町おこしを行っている地域の中の一つ埼玉県久喜市鷲宮町(わしみやまち)の取り組みを紹介させて頂きます。
鷲宮町の鷲宮神社は、由緒ある関東最古の出雲系の大社と言われていますが、アニメ・漫画作品の「らき☆すた」の舞台のモデルとなりました。実在の神社がモデルとなったことで、作品のファンが多く訪れるようになり、テレビや雑誌等でも大きな注目を集めました。このように、ファンがアニメ・漫画の舞台となった街を訪れる事は、「聖地巡礼」と呼ばれています。
「聖地巡礼」の動きに注目した鷲宮町商工会は、地元の製菓会社等に「聖地巡礼」にちなんだ商品を依頼し売り出したところ、売れ行きが良かったといいます。その後、取り組みを本格的に行うため、原作の出版元である角川書店と連絡をとったところ、協力を得ることができ、「らき☆すた」の作者や声優が鷲宮神社を訪れるイベント「公式参拝」が2007年12月に実現しました。
「公式参拝」は、アニメファンのボランティアの活躍もあり、大成功に終わりました。この取り組みはテレビ等のメディアで多く紹介され、以前より多くの人が集まるようになりました。その後も、鷲宮町では「らき☆すた」のみこしを作って祭りを催したり、「らき☆すた」の街灯を設置したりするなど取り組みを続けています。
鷲宮町の取り組みは、地域に大きな経済効果(10億円超とも言われています)をもたらしたことから、全国から視察が殺到し、現在では様々な地域でアニメ・漫画を用いた町おこしが展開されています。しかし、鷲宮町の取り組みを模しただけで上手くいくはずもなく、取り組みが盛り上がらずに失敗しているケースが散見されます。鷲宮町では、おもてなしの気持ちを忘れず、ファンやお客さんを巻き込んだ取り組みを行っているからこそ、支持されつづけているのかもしれません。(N)