「信州で2番目に山奥の村」である長野県大鹿村をご存知でしょうか。南アルプスと伊那山地に挟まれた山間の村であり、交通の便も決して良いとは言えません。首都圏から車で4時間ほどかかり、また曲がりくねる山道を運転しなければたどり着くことができません。
この大鹿村は、中央構造線上に位置しています。中央構造線については、中学校や高校の理科の授業で習った方も多いのではないでしょうか。中央構造線は非常に古い断層で、その痕跡は地中深くに隠れているのですが、大鹿村にはその断層の断面が地表に現れている部分、いわゆる「露頭」を確認する事ができる珍しい場所で、地質マニアの聖地と言っても過言ではありません。
そんな大鹿村には、石と断層、地質について詳しく解説した中央構造線博物館があります。中央構造線の断層露頭はぎ取り標本をはじめ、岩石の大型切断研磨標本約200点、南アルプス1万分の1地形地質模型などが展示されています。また、中央構造線に関する展示だけでなく、地震や活断層、砂防や災害に関する展示も充実しています。
けっして大きな博物館ではないのですが、しっかり見学しようと思うと一日がかりになってしまいます。地質学に精通している学芸員が常駐しており、展示物等について詳しく解説してもらえます。資料の充実ぶりや展示方法のこだわりが話題になり、テレビ朝日の番組「タモリ倶楽部」で取り上げられたこともあります。
交通の便も悪く、また周囲に飲食店等もほとんどないという恵まれない立地条件にも関わらず、私が訪れた日は多くの見学客でにぎわっていました。
中央構造線博物館は、観光資源に乏しい秘境の村が、地域の資源を上手く活用して集客に成功している事例の一つであると言えるでしょう。地質に詳しくなくても、学芸員の詳しい説明がありますので、十分に楽しむことができますので、是非一度訪れていただきたいと思います。(N)